日本の英語教育で「読み書き重視」に偏ってきた結果、多くの人が「英語の文章は読めるけど、聞けない・話せない」という状態に陥っています。ここでは「音声ファースト」のアプローチについて、10年以上の大学英語授業の経験から得た知見を共有します。
そもそも言語は「音」から始まる
人間が母語を習得するプロセスを思い出してください。赤ちゃんはまず膨大な量の音声を聞きます。それから少しずつ音を真似し、単語を話し始め、文を組み立てるようになり、最後に読み書きを覚えます。「聞く→話す→読む→書く」という順番です。
ところが日本の英語教育では、中学1年生からいきなり文字と文法規則を教え始めます。音声の基盤がないまま文字を学ぶので、頭の中で「英語の文字列→日本語に翻訳→理解」という回りくどいプロセスが定着してしまう。これが「読めるけど聞けない」の根本原因です。
「音声ファースト」とは何か
音声ファーストとは、英語学習において音声(リスニング・発音・スピーキング)を最優先に据えるアプローチです。これは文法や読解を否定するものではなく、順番の問題です。具体的には:まず音に慣れる、次に発音を体で覚える、意味と音を直接結びつける、その上で文法・読解を積み上げる。
なぜこれが効くのか
言語学者Stephen Krashenの「インプット仮説」は、言語習得には大量の「理解可能なインプット」が必要だと主張しています。そしてそのインプットの中心は音声です。音韻認識の研究は、英語の音の体系を理解することがリスニング力だけでなく、読解力の向上にも直結することを示しています。
大学の授業で見てきたこと
10年以上大学で英語を教えてきた中で、一つ明確に言えることがあります。音声から入った学生は、後から文法も伸びる。文法から入った学生は、音声がなかなか伸びない。特にシャドーイングを取り入れた学期は、期末発表のクオリティが目に見えて違いました。
今日からできる音声ファーストの実践
毎日15分の英語音声浴 — ポッドキャスト、YouTube、Netflix、何でもOK。好きな分野の英語コンテンツなら続けられます。
シャドーイング — 英語音声を聞きながら0.5〜1秒遅れで真似して声に出す。短い素材(30秒〜1分)を何度も繰り返すのがコツです。
発音の「型」を学ぶ — th, r/l, v/b, 母音の長さと質。日本語にない音を意識的に練習しましょう。
AIを活用する — AI英会話練習(プロンプト集参照)、発音評価ツール(ツール紹介参照)で個別フィードバックが手軽に得られます。
まとめ — 完璧じゃなくていい
音声ファーストの最大のメリットは、早い段階で「通じる」体験ができることです。完璧な発音でなくていい。文法が間違っていてもいい。相手に自分の言いたいことが伝わる体験は、何よりのモチベーションになります。まずは今日から15分、英語の音声に触れることから始めてみてください。