ChatGPTで英語を勉強する方法 — 大学英語講師が実践している7つの使い方

ChatGPTが英語学習に使える、という話はもう聞き飽きたかもしれません。

でも実際のところ、「具体的に何をどうすればいいの?」というところで止まっている人が多い印象です。「ChatGPTに英語を教えてもらおう」とだけ言われても、漠然としすぎていて手が動かないですよね。

大学で英語を教えています。研究にもChatGPTやClaude、Geminiを日常的に使っています。その中で、英語学習に実際に効果があった使い方と、正直あまり意味がなかった使い方が見えてきました。

この記事では、自分が実際に授業で取り入れたり、自分自身の語学学習(ペルシア語をやっています)で使っている方法を、できるだけ具体的に書きます。理論的な背景が気になる方は第二言語習得理論×AIの記事も参考にしてください。

前提:ChatGPTは「万能な英語の先生」ではない

最初に大事なことを言います。ChatGPTは優秀ですが、英語教育の専門家ではありません。

文法の説明が微妙に不正確なことがあります。発音は教えられません。学習者のレベルに合わせた段階的な指導も、そのままでは得意ではありません。「ChatGPTがあれば英会話スクールいらない」みたいな記事を見かけますが、それは言いすぎです。

ただし、使い方を工夫すれば、従来の独学では不可能だったことが可能になるのも事実です。24時間付き合ってくれる会話相手がいる、というだけで語学学習の環境は激変します。

大事なのは「何が得意で何が苦手か」を理解して使うこと。それさえ押さえておけば、かなり強力なツールになります。

1. 英会話の練習相手として使う

一番わかりやすい使い方です。ChatGPTに「英語で会話しよう」と言えば、すぐに始められます。

ただ、漠然と会話するだけだとすぐ飽きます。おすすめは場面を設定すること

あなたはカフェの店員です。私が注文するので、英語で対応してください。注文が終わったら、おすすめのメニューも教えてください。私の英語に間違いがあったら、会話の最後にまとめて指摘してください。

こうすると、ただのフリートークよりずっと実践的な練習になります。実際の場面で使う表現が自然に出てきますし、フィードバックもちゃんともらえます。

音声入力(ChatGPTのアプリなら音声会話も可能)を使えば、スピーキングの練習にもなります。ただし、発音の細かい評価にはAzure SpeechやSpeechAceのような専用ツールのほうが正確です。ChatGPTの音声機能は「通じるかどうか」くらいのレベルで考えてください。

ChatGPT以外のAIでの英会話練習については、ChatGPT・Claude・Grok・Geminiの使い分けガイドにまとめています。それぞれ微妙に得意分野が違います。

2. 英文ライティングの添削・改善

個人的に、これが一番「ChatGPTの恩恵を受けている」と感じる使い方です。

英語で書いたメール、エッセイ、レポートをChatGPTに見せて「自然な英語に直して」と頼むだけ。これだけで、ネイティブチェックに近いフィードバックが得られます。

ポイントは、ただ直してもらうだけで終わらないこと

以下の英文を自然な英語に修正してください。修正した箇所には【】をつけて、なぜ変えたのか日本語で簡単に説明してください。

このプロンプトで頼むと、どこがどう変わったのか、なぜ変わったのかがわかります。「直してもらって終わり」だと学習になりませんが、理由がわかると次から同じ間違いをしなくなります。

レベル別の添削の頼み方

初級: 「中学生でもわかる英語で書き直して」
中級: 「文法の間違いだけ直して。表現は変えないで」
上級: 「アカデミックな文体に調整して。フォーマルすぎる箇所があれば教えて」

特にビジネスメールの添削は即効性があります。「この文面を丁寧だけどフレンドリーなトーンに調整して」みたいな微妙なニュアンスの調整も得意です。

3. 多読の素材を無限に生成する

英語力を伸ばすのに多読が効果的なのは、第二言語習得研究でもかなり確立された知見です。

問題は、自分のレベルに合った、かつ興味のある素材を見つけるのが大変なこと。市販のgraded readersは種類が限られるし、ウェブの英文記事は難しすぎたり退屈だったりします。

ここでChatGPTが活躍します。

以下の条件で英語の短い記事を書いてください:
– トピック:日本のコンビニ文化
– 語彙レベル:CEFR B1(中級)
– 長さ:300語程度
– 知らなそうな単語には日本語の注釈をつけて

自分の興味があるトピックで、自分のレベルに合った英文が無限に手に入ります。これは従来の学習環境では考えられなかったことです。

詳しい活用法は英語の多読をAIで加速するの記事で書いています。

4. 語彙力を効率的に伸ばす

単語帳を眺めるだけの暗記は、脳科学の観点からもあまり効率がよくないとされています。文脈の中で出会って、使って、また出会う。このサイクルが大事です。

ChatGPTを使った語彙学習で効果的なのは、例文生成です。

「reluctant」を使った例文を5つ作ってください。日常会話、ビジネス、アカデミックの場面で。日本語訳もつけて。

辞書の例文は1〜2個しかないことが多いですが、ChatGPTなら文脈を変えていくつでも作ってくれます。同じ単語を異なる場面で見ることで、意味の「幅」が掴めます。

もう一歩進んだ使い方

「reluctant」「hesitant」「unwilling」の違いを、具体的な例文で説明してください。どういう場面でどれを使うのが自然か教えて。

似た意味の単語の使い分けは、辞書だけではなかなかわかりません。ChatGPTは大量の英文データから学習しているので、ニュアンスの違いを例文付きで説明するのがかなり得意です。ただし、まれに不正確なこともあるので、気になったら英英辞典(LongmanやOxford Learner’s)で確認する習慣をつけてください。

5. 文法のわからないところをピンポイントで聞く

文法書を読んでもよくわからない、という経験は誰にでもあると思います。

ChatGPTの良いところは、「自分の言葉で質問できる」こと。文法書は体系的に書かれていますが、自分が知りたいピンポイントの疑問に答えてくれるわけではありません。

「I have been to Tokyo」と「I went to Tokyo」って何が違うの? 日本語だとどっちも「東京に行った」なんだけど。

こういう素朴な疑問に、日本語でわかりやすく答えてくれます。

ただし注意点がひとつ。ChatGPTの文法説明が100%正確とは限りません。特に細かい用法の違いや例外的なケースで、怪しい説明をすることがあります。「大枠を理解するためのとっかかり」として使って、気になるところは信頼できる文法書(Michael SwanのPractical English Usageなど)で裏を取るのがおすすめです。

基本的な文法の解説は時制主語のカテゴリーなど、このサイトでも少しずつ書いています。覚えるというより、体に染み込ませる感覚で読んでもらえれば。

6. リスニング練習の補助として

正直に言うと、リスニングはChatGPTが一番苦手な分野です。テキストベースのツールなので、当たり前ですが。

ただ、間接的な補助としては使えます。

  • リスニング素材の内容理解: ポッドキャストやTED Talkを聞いた後、内容の確認やわからなかった表現の質問に使う
  • ディクテーション添削: 聞き取った英文をChatGPTに見せて、文法的に正しいか確認する
  • シャドーイング用のスクリプト生成: 特定のトピックで、特定の長さのスクリプトを作ってもらう(音声はテキスト読み上げアプリで生成)

ChatGPTのアプリで音声会話を使えば、リスニング+スピーキングの同時練習にはなります。ただ、多様なアクセントや自然なスピードでの聞き取り練習には、ポッドキャストやYouTubeのほうが向いています。

7. 試験対策に使う

TOEICやTOEFL、IELTSの対策にもChatGPTは使えます。特にライティングセクションの練習には効果的です。

IELTSのWriting Task 2の練習をしたいです。テーマを1つ出して、私が書いたエッセイを採点基準(Task Response, Coherence and Cohesion, Lexical Resource, Grammatical Range and Accuracy)に沿って評価してください。

模擬問題を無限に生成できて、書いたものをすぐに評価してもらえる。これだけでも、ライティングの練習環境としてはかなり充実します。

ただし、ChatGPTのスコア予測はあくまで「目安」です。実際の試験とは採点基準の適用の仕方が違うので、公式の模擬試験と併用してください。

効果を最大化するための3つのコツ

1. 「日本語で説明して」をためらわない

英語学習だからって全部英語でやる必要はありません。わからないことは日本語で聞いて、理解してから英語に戻る。このほうが効率的です。

2. プロンプトに「自分のレベル」を伝える

「英語は中級レベルです」「TOEICは600点くらいです」と最初に伝えておくだけで、回答の難易度が調整されます。ChatGPTは言われなければ、かなり難しい英語で返してくることがあります。

3. ChatGPTだけに頼らない

ChatGPTは「練習相手」「質問相手」としては優秀ですが、学習の全体設計を任せるものではありません。何をどの順番で学ぶかは、自分で考えるか、信頼できる学習法の知見を参考にしてください。語学学習で本当に大切な10のこともあわせてどうぞ。

ChatGPT以外の選択肢

ChatGPTだけが選択肢ではありません。

  • Claude: 長い文章の添削や、丁寧なフィードバックが必要なときに向いています。Claudeでの英語学習についてはこちら
  • Gemini: Google検索との連携が強み。最新の情報を使った学習素材の生成に便利。Geminiでの英会話練習
  • 専用アプリ: 発音練習や体系的な学習には、AIを組み込んだ専用の学習アプリのほうが適している場面もあります

それぞれの特徴と使い分けはAIで英会話練習する方法の記事で詳しく比較しています。

まとめ

ChatGPTは英語学習のあり方を変えつつあります。24時間いつでも付き合ってくれる会話相手・添削者・質問相手がいる環境は、10年前には想像もできなかったものです。

ただ、魔法のツールではありません。使い方次第です。

この記事で紹介した7つの使い方の中から、自分に合いそうなものを1つか2つ試してみてください。全部やる必要はありません。「これは便利だ」と思えるものがひとつ見つかれば、それだけで学習の質は変わります。

もっと体系的にAIを使った英語学習に取り組みたい方は、第二言語習得理論×AIの記事も読んでみてください。「なぜこの方法が効くのか」の理論的な背景がわかると、自分で応用が効くようになります。


余談:自分でも作ってみた

この記事で書いたような内容と関連して、自分でもAI英語学習ツールを作っています。SpeakSmartというサービスで、発音評価(Azure Speech + SpeechAce の2エンジン)、AI英会話、ライティング添削、リスニング、語彙学習を一通りまとめたものです。サーバー維持費やAI APIの利用コストがかかるので、フルで使う場合は有料(月480円〜)ですが、1日数回の無料枠もあります。興味があればどうぞ。

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