英語が通じないとき、「自分の英語力が低いから」と思っていませんか。3年ほど大学生の発音をAIで測り続けて見えてきたのは、通じない原因のほとんどが能力ではなく、構造の見落としだったということです。この記事では、その構造を3つに分けて整理し、各レベルで効く練習の方向だけ書きます。精神論はなしです。
「英語が通じない」を能力問題にすると詰む
留学経験者でもTOEIC900点でも、ネイティブに聞き返されることはあります。逆に語彙が貧しくても、現地で問題なく注文できる人もいます。両者の差は単語量でも文法知識でもなく、音をどう作っているかだけです。
つまり「英語をもっと勉強する」のと「英語を通じさせる」は、別の問題です。前者を続けても後者は改善しません。発音は独立した訓練対象として切り出す必要があります。
では、何を訓練すれば通じるようになるのか。大学生の音声データを分析していて、繰り返し出てきたのが次の3つでした。
音素の輪郭が甘い
r/l、b/v、æ/ʌ など、日本語にない音の出し分けがぼやけている状態です。本人は出したつもりでも、第三者には別の音に聞こえています。
リズムが日本語のまま
日本語はモーラ拍(全音節を等間隔で打つ)、英語は強勢拍(強い音節だけを等間隔で打つ)。リズムが違うと、たとえ個々の音が正しくても英語に聞こえません。
自分の発音を聞いていない
録音を聞き返す習慣がない人は、頭の中の英語と口から出ている英語が一致しません。練習量がいくらあっても、フィードバックがなければ同じ癖を反復しているだけです。
理由1:音素の輪郭が甘い
日本語の音素はおよそ24前後、英語は方言で違いますが40前後あります。日本語に存在しない音、または近いけれど別物の音を、日本語の音に置き換えて発音している状態が「輪郭が甘い」ということです。
典型例を挙げます。
- r と l:両方とも「ラ行」で代用してしまう。
right / lightが同じ音に聞こえる。 - b と v:v を「バ行」で出してしまう。
berry / veryが混ざる。 - æ と ʌ:cat と cut の母音が同じになる。
- θ(th):「サ行」で代用しがちで、thinkがsinkに聞こえる。
大事なのは、「正しく出せているか」を本人が判断できないことです。出したつもりで出ていないので、間違いが固定されていきます。
理由2:リズムが日本語のまま
音素が完璧でも、リズムが日本語のままだと英語として聞き取ってもらえません。日本人英語が「カタカナっぽい」と言われる正体は、ほとんどがこれです。
英語は強勢拍リズム、つまり強い音節と弱い音節を区別して、強い音節だけが一定の間隔で並びます。弱い音節は弱化して短く曖昧になります。逆に日本語はモーラ拍リズムで、全ての音をだいたい同じ長さで打ちます。
例として I want to go to the store を考えます。
日本語リズムで読むと: アイ・ウォント・トゥー・ゴー・トゥー・ザ・ストア(全部同じ長さ) 英語リズムで読むと: I WANT to GO to the STORE(大文字部分だけが強い/間が圧縮される)
後者は「アイワントゥゴートゥザストア」というより「アイワントゥゴストア」に近く聞こえます。to や the はほぼ消えます。
この記事を読んでも、自分の発音は1ミリも変わりません
必要なのは「自分の今の発音を可視化する」ことです。AI発音評価ツール SpeakSmart なら、無料で1回、自分の発音を音素レベルで採点できます。
理由3:自分の発音を聞いていない
3年ほど100人以上の学生の発音をAIで測ってきて、一番強く感じたのがこれです。練習量と上達は比例しません。フィードバック量と上達が比例します。
具体的には、こういう状態の学生はほぼ伸びませんでした。
- 毎日30分シャドーイングしているが、自分の音声を一度も聞き返したことがない
- 授業で発音を直されても、家に帰ると元に戻っている
- 「正しい発音」のお手本は聞くが、「自分の発音」を聞かない
頭の中の英語と、口から出ている英語は別物です。本人は「ちゃんと言えた」と思っていても、録音を聞き返すと違う音になっていることがほとんどです。この差分を見ない限り、何回練習しても同じ場所をぐるぐる回ります。
解決:AIで「自分の発音」を可視化する
3つの理由は全部「自分では気づけない」という共通点を持っています。だから第三者の判定が必要です。理想は専門家のフィードバックですが、毎日マンツーマンで見てもらうのは現実的ではありません。
ここ数年でAzure Speech、ElevenLabs、Whisper など、音声を音素レベルで採点できる技術が手に入るようになりました。これを使えば、自分の発音が /r/ として認識されているか /l/ として認識されているかが、その場で数字で出ます。
運営しているSpeakSmartは、まさにこの「自分の発音を客観的に測る」ための学習プラットフォームです。Microsoft Azure Speech の発音評価APIをベースに、音素・単語・流暢さ・アクセントを別々にスコア化しています。無料で1回試せます。
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まとめ
- 英語が通じないのは能力ではなく、音素・リズム・自己モニタリングの3つを分けて訓練していないことが原因
- 音素は単語単位で出し分けが認識されるかを確認する
- リズムは強い拍と弱い拍の差を意識し、弱い部分は曖昧でよいと割り切る
- 練習時間の半分は「自分の録音を聞き返す」に使う
- AI発音評価を使うと、3つ目の「自己モニタリング」を半自動で代行できる
Language × AI Lab / 筆者:志柿浩一郎(北海道大学)