英語での自己紹介:Creating a First Impression
英語IIは基本的に自学自習ベースの科目です。この資料は、自分のペースで読んで、気になるところだけ深掘りして、自分の自己紹介を手元で組み立てる、という使い方を想定しています。読み物 → フレーズ集 → 穴埋めテンプレ、の順に進めると、最後には自分用の自己紹介が1本できあがります。
扱う内容:(1) なぜ英語圏で挨拶と自己紹介がここまで重視されるのかという背景、(2) 日本語と英語で思考回路がどう違うかを対訳で確認する作業、(3) Creating a First Impression 5ステップ のフレームワーク、(4) 日本人がやりがちな表現、(5) トーンとレジスターの使い分け、(6) 自分用ワークシート+フレーズ集、(7) 穴埋めで自分の自己紹介を組み立てるテンプレ。
1. そもそも、なんで挨拶と自己紹介が大事なのか
「挨拶しましょう」「自己紹介しましょう」は日本の学校で耳にタコができるほど聞いてきたはずですが、「なんでそんなに大事なの?」の理由を説明されたことはたぶん少ないと思います。ここは文化史的な仮説の話として読んでください。断定ではありません。
仮説:地続きの文化圏で生まれた「敵じゃないよ」の儀礼
ヨーロッパや中東、アフリカは、陸続きで別の言語・別の宗教・別の部族が行き交ってきた地域です。見知らぬ相手と道端でばったり会ったとき、最初に必要だったのは「あなたを殴りませんよ」「武器を持っていませんよ」という意思表示でした。
よく言われるのが握手の起源の一説です。右手を見せて握り合うのは「剣を抜ける手が空いている」ことを示す動作だった、という話です。真偽はさておき、この発想は文化的にずっと続いています。
「Hello」「Hi」「How are you?」「Nice to meet you」といった一連のやりとりは、この流れの延長にあります。意味のある会話の前に、まず儀礼で緊張を下げる。自己紹介も同じです。「どこから来た」「何をしている」「どんな人間か」を最初に開示して、相手の警戒を下げます。
一方、日本は島国で「察し合い」が前提だった
日本は長いこと、生まれた村で生まれて死ぬ共同体が中心でした。相手がどこの誰かは、説明しなくても最初から分かっている。だから言葉で自分を開示する訓練が積み上がりにくい。自己紹介が「項目を読み上げる業務」っぽくなりがちなのは、この歴史的な背景とつながっている可能性があります。
英語の自己紹介を練習するときは、「項目の読み上げ」から「相手との距離の調整」にモードを切り替えてください。ここが一番のポイントです。
2. 日本語と英語、思考回路がどう違うか(対訳で見る)
同じ自分を紹介しても、日本語で組み立てた自己紹介と、英語で組み立てた自己紹介は、「何から話し始めて、どの順で、何を強調するか」がかなり違います。試しに日本語の自己紹介文をそのまま英語に直訳し、英語の自己紹介文をそのまま日本語に直訳してみると、違和感がはっきり見えます。
事例A:志柿の自己紹介(教員バージョン)
事例B:大学1年生の自己紹介
何が違うか:
日本語の思考回路 — 外枠(所属・肩書き・丁寧な挨拶)から入り、項目を順に並べ、「よろしくお願いします」で閉じる。主語は省略、人柄は出てこない。「業務報告」に近い骨格です。
英語の思考回路 — 自分のキャラから入る(”Call me Koach” のようなフック)、その由来エピソード、今やっていること、なぜここにいるか、締め。個人起点で相手に寄っていく骨格です。
だから日本語自己紹介を直訳すると、英語としては「硬い」「業務的」「距離が遠い」。逆に英語自己紹介を直訳すると、日本語としては「軽い」「自分語りが多すぎる」と感じる。同じ人間の同じ情報でも、入れ物が違うと印象が変わります。英語で自己紹介するときは、日本語の骨格を翻訳するのではなく、英語の骨格で最初から組み立て直すのがコツです。
3. Creating a First Impression:5ステップ・フレームワーク
どの順番で何を話すか、迷ったらこの5ステップを骨格にします。志柿が授業で長く使ってきたテンプレです。全部使う必要はなく、場面に応じて引き算します。
Example 1:教員バージョン
Example 2:学部生バージョン
Example 3:留学生バージョン(名前のフック活用)
4. 入れるもの・外すもの:判断の練習
日本の自己紹介文化では当たり前に入れている項目の中に、英語圏の自己紹介では「なんで今それ言った?」になるものがあります。
✓ 基本的には入れてOK
- 呼ばれたい名前(ニックネーム可)
- 出身国・出身地
- 学年・専攻・所属
- 関心のある分野 1つ
- 趣味・最近ハマっているもの 1つ
- 相手への質問(What about you?)
✗ 基本的には外す(聞かれたら答える)
- 年齢(北米では特に、初対面で言うと「え、なんで?」になる)
- 血液型(ほぼ意味が通じない。占い文化が違う)
- 婚姻状況・交際状況(プライベートすぎる)
- 身長・体重
- 実家の家族構成(聞かれたら答える)
- 過剰な謙遜・自己否定
- 政治・宗教の踏み込んだ話
判断の基準: 相手が「その情報をもらって何に使う?」と聞いたときに答えられるかどうか。名前や専攻は会話の続きに使える。血液型や身長は、使い道がない。「自分が言い慣れているから」ではなく「相手にとって意味があるか」で選ぶのがコツです。
5. 日本人がやりがち、でも避けたい表現
文法的に間違っていなくても、英語ネイティブの耳には違和感が残る表現があります。理由もセットで見てください。
“My name is …”
“My hobby is playing tennis.”
“I am a Japanese.”
冒頭で “Nice to meet you.” を言う
“My English is poor, I’m sorry.”
“I’m a 20 years old.”
“Thank you for your listening.”
“It is a great honor to introduce myself.”
観光パンフレット化(前置きの超長尺化)
Recommended: “I’m from Hokkaido — the northern island.”自己紹介は相手との距離調整であって、地理の説明ではない。
過剰な自己否定:”I have nothing special. I’m just an ordinary student.”
6. トーンとレジスター:相手に合わせて表現を変える
同じ人間でも、部長と話すときと、居酒屋で同期と話すときと、高校の後輩と話すときで、日本語の言葉遣いは自然に変わります。英語も全く同じです。
大前提: レジスターに優劣はありません。フォーマルが「正しい英語」で、カジュアルが「崩れた英語」というわけではない。どれも、その場で機能する英語です。外国語を学ぶなら、可能な限りあらゆる階層・あらゆる場面の表現に触れておくのが理想です。論文・ニュース・友達同士・ラップ・職場の雑談、全部違う顔を持っていて、全部「本物の英語」です。
日本語でも、敬語しか知らない人は居酒屋で浮くし、タメ口しか知らない人は面接で落ちる。英語も同じで、使える引き出しが多いほど、相手との対話がスムーズになります。
面接・学会発表・教員へのメール挨拶
授業の初日、クラスメートへの自己紹介
学生同士のパーティ、英会話カフェ、国際交流イベント
友達同士、SNS、ゲーム仲間、仲のいい人との軽い挨拶
使い分けのコツ: 相手が今どのレジスターで話しているかを観察して、そこに合わせるのが一番スムーズです。映画・ドラマ・ラップ・ニュース・論文・ビジネス書・SNS・ポッドキャスト、全部触っていけば、引き出しは自然に増えます。
7. 自分で書く:5ステップ・ワークシート+使えるフレーズ集
例文を眺めているだけだと、自分の自己紹介は出てきません。下の空欄を埋めて、つなげて声に出してみてください。フレーズ集は「そのまま使う」のではなく、自分の情報に合うものを選んで組み合わせるために置いています。同じステップでも10通りくらいの言い方を試してみるのが、いちばん力がつきます。
Who are you? — 呼ばれたい名前、ニックネーム、最初のフック
Hi, I'm ___./Hey, I'm ___./Hello, I'm ___.It's nice/great/wonderful to meet you — I'm ___.My name is ___, but please call me ___.You can call me ___./I go by ___.Everyone calls me ___./My friends call me ___.- ニックネームの由来を一言:
___ gave me this nickname because ___. - 名前のフック:
My name sounds like ___, so feel free to ___.
What am I doing? — 今の所属・やっていること
I'm a (first/second/third/fourth)-year student at ___.I'm studying ___ at ___./I'm majoring in ___.I'm currently working on ___./I'm focusing on ___ these days.I work at ___ as a ___.I'm part of the ___ club / team / lab.Right now, I'm spending most of my time on ___.
What can I do? — 得意なこと、人柄が見える一点
I'm good at ___./I'm pretty good with ___.I'm the kind of person who ___.I'm really into ___./I'm a big fan of ___.I love ___ing./I enjoy ___ing in my free time.I've been ___ing since I was ___.What I'm best at is probably ___.- 人柄語:
analytical / curious / hands-on / creative / detail-oriented / outgoing / quiet / easy-going
What will I do / What did I do? — 将来やりたいこと、これまでの軸
I'm planning to ___./I'm hoping to ___.I want to work in ___ in the future.I'm not 100% sure yet, but I want to do something in ___.I'm interested in ___, especially ___.Before this, I ___./Previously, I ___.I spent ___ years ___ing.- ぼんやりでもOK:
I don't know exactly yet, but I'm sure I want to ___.
What can we do (together)? — 相手とのつながり方、未来への開き
I hope we can ___ in the future.If you're into ___, I'd love to stay in touch.Looking forward to ___ing with you all.Feel free to reach out if ___.I hope I can get to know you all.Happy to be here./Nice to see you all.That's me — what about you?(相手に pass する締め)
8. 穴埋めテンプレ:組み合わせで自分の自己紹介を作る
4種類のテンプレを用意しました。黄色の枠に、上のフレーズ集や自分の情報を入れて組み立ててみてください。1つのテンプレで3〜4パターンくらい作れるはずです。声に出して読んだときに「自分っぽい」と感じる組み合わせが、いちばんいい組み合わせです。
Hi / Hey / Hello — I’m 呼ばれたい名前.
I’m a 1st / 2nd / 3rd / 4th-year student at 学校名, studying 専攻.
I’m really into 好きなこと, especially 具体的に.
Looking forward to … / Happy to be here / Nice to meet you all.
例:”Hi — I’m Taro. I’m a 2nd-year student at Hokudai, studying engineering. I’m really into cycling, especially long-distance rides on weekends. Happy to be here.”
It’s nice / great / wonderful to meet you — I’m フルネーム.
Please call me ニックネーム, like … / as in ….
名付けの由来を一言.
I’m 今やっていること, and I love 趣味・好きなこと.
I hope we can stay in touch / get to know each other / talk more.
例:”It’s great to meet you — I’m Koichiro Shigaki. Please call me Koach, like coach for basketball teams. My friends in the U.S. gave me this name because they couldn’t pronounce mine. I’m studying communication, and I love dancing and drawing. I hope we can get to know each other.”
Hi, I’m フルネーム, a 学年-year student at 大学名.
I’m studying 専攻, with a focus on 絞った関心.
I’m really interested in 具体的な問い, and I’ve been 関連した活動.
In the future, I hope to 将来やりたいこと.
If you’re working on something related, I’d love to hear about it / connect / compare notes.
例:”Hi, I’m Ben Umino, a 3rd-year student at Boston University. I’m studying Computer Science, with a focus on data security. I’m really interested in how to design systems so governments don’t get hacked, and I’ve been building small prototypes. In the future, I hope to work with public agencies. If you’re working on something related, I’d love to compare notes.”
Hey / Hi there — I’m 名前.
I’m from 出身, studying 専攻 at 大学.
I’m into / pretty into / kind of into 趣味 — 好きな理由を一言.
What about you? / How about you? / And you?
例:”Hey — I’m Taro. I’m from Hokkaido, studying engineering at Hokudai. I’m pretty into cycling — it’s the one thing that clears my head. What about you?”
組み立てるコツ: テンプレを丸暗記しないこと。上のフレーズ集から気に入ったものを3つくらい選んで、自分の情報を入れて、声に出して読んでみる。最初はぎこちなくても、10回くらい繰り返すと、自分の言葉になります。AIに読み上げさせて自然かどうかチェックするのもおすすめ(AIプロンプト集に専用テンプレあり)。
9. 判断練習:この場面、何を入れる?
以下のケースで、入れる項目・外す項目、5ステップのどこを厚くするかを考えてみてください。正解は1つではありません。
- Step 1: 名前(呼ばれたい名前)
- Step 2: 出身国・学年・専攻
- Step 3 or 4: 興味分野 or 授業への期待 1つ
- Step 5: “Nice to meet you all.” / “Happy to be here.”
外すもの:年齢、血液型、家族構成、身長体重、「英語苦手です」系の前置き。
- Step 1: 名前
- Step 2: 所属(大学・研究室・学年)
- Step 3-4: 研究テーマを1行で
- Step 5: “Thanks for stopping by.” / “Let me walk you through this.”
外すもの:趣味、出身地の観光案内、自分の英語への謝罪。相手は研究を聞きに来ている。
- Step 1: ニックネーム
- Step 2: 出身国(”I’m from Japan.”)
- Step 3: 旅行の目的 or 今いる街の印象
- Step 5: “What about you?”
外すもの:フルネーム、学年・専攻の詳細、細かい経歴。旅先では相手もそこまで知りたくない。
- Step 1: フルネーム + 所属
- Step 2-4: 専攻・研究テーマ
- 本題: 連絡した理由(ここが実質的に一番大事)
- Step 5: 相手の時間への配慮(”Thank you for considering my request.”)
外すもの:趣味、年齢、長い前置き。メールでは用件に早く入るのが礼儀。
10. 最後にひとつだけ
自己紹介の型を覚えることは、出発点として便利です。ただ、型を丁寧に守るほど、出てくる自己紹介は全員そっくりになります。「テンプレ通りに読み上げる」ではなく、「相手との距離を30秒でどう調整するか」に意識を寄せると、同じ英語力でも受け取られ方がかなり変わります。
英語IIは自学自習で進める科目です。上のワークシート → フレーズ集 → 穴埋めテンプレを自分のペースで回してみてください。うまく話そうと頑張るより、相手が今どのレジスターで話しているかを先に観察する。そこに合わせていくのが一番ラクです。詰まったらAIプロンプト集に添削・読み上げ用のテンプレを置いているので、好きに使ってください。
関連資料: 学習のコツと授業の使い方 | AI プロンプト集(自己紹介の添削プロンプトあり)