受動態 (passive voice) は「〜される」と訳されることが多いですが、そこから入ると本質を見失います。
英語の受動態は、何について話しているかを変える仕組みです。能動態とは「同じことの別の言い方」ではありません。話し手が何に注目してほしいか、何が大事だと思っているかが変わります。
能動態と受動態は別物
よく「能動態を受動態に書き換えなさい」という練習問題がありますが、あれは文法の仕組みを理解するためのもので、実際の英語はそんなふうに動いていません。
Someone stole my bike.
My bike was stolen.
この2つは「同じ情報」ではないです。上は「誰かが盗んだ」という行為の話。下は「自転車がなくなった」という結果の話。話し手が何について話したいかが違う。だから使う場面が違う。
自転車を盗まれたことを友達に伝えるとき、Someone stole my bike. とは普通言いません。盗んだやつが誰かは知らないし、興味もない。My bike was stolen. です。自転車のことを話しているからです。
形は単純です
be + past participle(過去分詞)
The window was broken.
This book is read by millions of people.
The meeting has been cancelled.
be動詞の時制を変えれば、受動態の時制も変わります。is broken, was broken, will be broken, has been broken。仕組みはそれだけです。
受動態を使うのは「理由がある時」だけ
受動態は「なんとなく」使うものではないです。使う時にはだいたい以下のどれかに当てはまります。
行為をした人がわからない、または重要じゃない
The bridge was built in 1920.
English is spoken in many countries.
My wallet was stolen.
橋を建てた作業員が誰かは聞きたくない。英語を話す人は不特定多数。財布を盗んだ犯人はわからない。こういう時、行為をした人を主語にしようがない。受動態が自然な選択です。
結果や出来事そのものに注目したい
The suspect was arrested last night.
A new vaccine has been developed.
ニュースでよく見ます。「警察が逮捕した」という警察の行為よりも、「容疑者が逮捕された」という出来事の方が伝えたいことだからです。
フォーマルな場面・学術論文
The data were collected over a six-month period.
It is believed that climate change affects migration patterns.
学術論文では「私が集めました」より「データが収集された」と書く方が客観的に聞こえます。ただ、最近は能動態で書くことを推奨するジャーナルも増えています。
by は必要な時だけ
受動態で by somebody をつけるのは、「誰がやったか」に情報としての意味がある時だけです。
This novel was written by Haruki Murakami.
The window was broken by the storm.
村上春樹が書いたという情報が大事だからbyをつける。by がなくても意味が通るなら、つけない方が自然なことの方が多いです。
by 以外の前置詞
受動態の後に来る前置詞は by だけではありません。動詞との組み合わせで決まっています。
be interested in — I’m interested in history.
be known for — Kyoto is known for its temples.
be made of — This table is made of wood.
be covered with — The ground was covered with snow.
be filled with — The room was filled with smoke.
正直、これらを「受動態」として意識して使う人はいないです。I’m interested in… はもうひとつのかたまりとして染み込んでいるもの。分析するより、そのまま使った方が早いです。
get + past participle
カジュアルな場面では be の代わりに get を使うことがあります。
I got fired. — I was fired. よりカジュアル。
She got injured in the accident.
They got married last year.
get を使うと「変化の瞬間」のニュアンスが出ます。was married は「結婚している」という状態、got married は「結婚した」という変化。フォーマルな文章では be を使う方が無難です。
受動態にできない動詞
目的語を取らない動詞(自動詞)は受動態にできません。
× The accident was occurred. → The accident occurred.
× She was died. → She died.
× I was happened to see him. → I happened to see him.
× The letter written yesterday. → The letter was written yesterday. (be が抜けている)
happen, occur, die, arrive, exist。これらは受動態にしようとすると、文法的に成立しません。
もうひとつ。boring と bored。
I am bored. — 退屈している。
I am boring. — 私はつまらない人間です。
-ed は「そう感じている」、-ing は「そうさせる側」。interested / interesting, surprised / surprising, excited / exciting。全部同じパターンです。I am boring. と言って「退屈してる」のつもりだと、自分のことをつまらない人間だと宣言していることになります。
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